キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
何度も褒めるからか智成が怪訝な顔で言ってくる。でも耳はさっきより赤いよ?
やっぱり照れてるんだ。そういうとこかわいいよね。
「えー? 本心で言ってるのに、もっと素直に受け止めてくれないかな?」
くすくす笑いつつ肩を竦めると、智成は視線を落としぼそりと言った。
「俺は、親の作った土台の上で胡坐をかいてるような人間だ。なにもすごくない」
「ん? どういうこと?」
意味が分からなくて訊き返したけど、智成は頭を横に振る。
「俺がすごいって言うなら、陸翔の方がもっとすごいぞ。今や海外事業部のエースであの歳で係長。二・三年後には部長昇進確実の出世頭だ」
「え!? うそっ!」
お兄ちゃん、そんなすごかったの? 
全然知らなかったよ。
自分のことは全然話してくれないんだから!
「それに比べて俺は人に仕える身で、社長の後ろに控えてるしか能がない」
「ちょっと、さっきから随分ひねくれた言い方するね? なんかあった?」
「別に」
なんか拗ねてる智成の顔をのぞき込むと逸らされ、ごちそうさま、と食器を持って立ち上がる。
なんだろう? たまに急に不機嫌になるよね、智成って。
全然智成の考えてることわかんないな。ちょっと不満。
食器を片付けに行く後姿を見てムッとしつつ、私もごちそうさまと言って食器を片付けた。

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