キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
暫くそのまま寝かせてやるかと思って、いつも自分が使っているブランケットを引き寄せ掛けてやった。
身じろぎした茉緒は起きることなく寝息が聞こえる。
ウェーブ掛かった髪を触ると意外と柔らかく気持ちがよかった。
ペットを撫でるようになんとなく頭を撫でてニュース番組を見ていると茉緒がうなされてるのに気づいた。
「う……ひろ、き」
「ひろき?」
「どう、して……」
明らかに男の名前を言った茉緒にゾワリと全身総毛立つ気がした。
眉根を寄せる茉緒の目から涙がこぼれる。
どう見ても、いい夢ではないだろう。
こぼれた涙を拭い黒いものが胸に渦巻く。
なぜそんな辛そうなんだと起こして聞いてやりたい。
「たっだいま~。あれ? 今日は茉緒がソファーで寝てるのか? ってか、なんで智成が膝枕なんてしてんだよ!」
陽気に返ってきた陸翔が俺たちを見て血相を変える。
それにかまっている場合じゃない。
「陸翔、ひろきって、誰だ?」
「え? ひろき?」
俺たちを引きはがそうとやってきた陸翔が俺の険しい顔を見て困惑している。
「なんだ、どした?」
「茉緒が、泣いてる」
新たにポロリと流した茉緒の涙を見て陸翔ははっとした顔をする。
「ひろき……確か、茉緒の元カレの名だ」
「なにがあった?」
睨むように見上げると陸翔は目を泳がせ手で口を覆う。
「何か月か前に別れたとは聞いたが、詳しくは分からねえ。正月に実家に帰ったときには結婚するかもなんて言ってたから驚いていたが」

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