キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
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午後三時。
社長秘書である俺は社長が会議に出席してる間に遅い昼食を取ろうと社員食堂に来ていた。そこに同期で海外事業部の八坂陸翔も遅い昼食を食べに来て当たり前のように目の前に座った。
ところがすぐに陸翔に私用の電話が来て席を離れ、暫くすると困り顔で戻ってきた。
「あ~~~忘れてた~~~」
「何か問題でも?」
「いやあそれが……智成クン、ちょっと」
へらっと笑った陸翔に嫌な予感しかしない。
案の定陸翔は拝むように無理な要求してくる。
「妹も、泊めてくれ?」
「そうなんだよね~。三つ年下で、茉緒っていうんだけどさ。今仕事辞めて家でプラプラしてるわけ。それでこっち遊びに来たいって言っててさ。ほんの数日だと思うから、ね?お願い」
「断る」
「え~なんで。いいじゃんひとり増えたくらい」
「数日ならホテルに泊ればいいだろう。お前も早く出てけ」
「言ったじゃん、茉緒は今無職なの。俺と一緒で職なし金なし宿無しなの。可哀想だと思わない?」
「お前職はあるんだからお前が金出せばいいだろ」
「俺あの火事でいろいろ要り様でさ。ちょっと無理~」
「はあああああああ~」
盛大にため息が出る。
うるうると情けない顔で訴えてくるこの男。
調子がいいったりゃありゃしない。
こいつのいいように振り回されて辟易してるっていうのに、なぜか最終的には拒めない。
得なやつだよまったく。