キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
「な、なに言うって」
「あー、うん。茉緒」
髪をかき上げた智成が私を見据えるからつい身構えた。
「誕生日、おめでとう」
真剣な顔してなに言うのかと思ったら、拍子抜けしてぽかんと口を開けてしまってた。
「ぷっ、間抜けな顔してるぞ」
「しっ、失礼な!」
噴き出しくつくつ笑う智成にまたからかわれて我に返った。
文句を言いつつ笑う智成にキュンと胸が鳴る。
びっくりしたけどうれしかった。
智成の言い訳では、祝いの言葉を一番に言いたくて何とか仕事を終わらせて日付が変わるぎりぎりに帰ってきたのに、私が電話中で(それも甘い声で? 私は自覚ないけど)電話相手が祝いの言葉を贈ったのだと気づいて先越されたのが面白くなかったという。
電話相手がお兄ちゃんだと私の言葉ですぐわかったみたいだけど。
「そんなことで拗ねてるなんて、智成って見かけによらず子供みたいだね」
今度は私がくすくす笑うと智成は恥ずかしそうに手で顔を覆う。
まずいな、と小さい呟きは私には聞こえなかった。
「でも、ありがと。祝ってもらえてうれしい。二番目だけど」
智成はピクリと眉が動いたけど言い返すこともなくちらりとこちらを見る。
「明日」
「ん?」
「いや、今日か。誕生日だから特別に一日付き合ってやる。行きたいとこあるか?」
またぽかんと口を開けて呆けてしまって、智成に笑われてしまった。
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