キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
「今日だけ、恋人のフリして?」
「え?」
余裕そうに笑っていた智成の顔が一瞬硬直した。
あれ? ダメだった?  
なんでもって言うから思い切って言ってみたんだけど。
様子を伺ってると智成は目をパチパチと瞬かせた。
「あ、いや。恋人の……フリ?」
「うん、今日だけでいいからこのイケメンさんは私の恋人なのよって見せびらかして自慢したい! ダメ?」
渋い顔して「見た目かよ」っていう呟きが小さく聞こえた。
まあいいじゃないの優越感に浸るくらい。
実際こんなハイスペックなイケメン恋人にできるわけないんだから。
自分には分不相応だってことはよーくわかってますよ。
でも智成はフリでも嫌だったかな?
ちょっと後悔しつつ智成の返事を待つ。
顎に手を当てた智成が逡巡するように目をキョロッと上に向けフッと笑う。
「わかった、いいよ。今日だけ俺は茉緒の恋人だ」
「やった! じゃ、これからデートってことで」
図々しくも智成の腕に巻き付き智成を見上げると、満更でもない顔をしている。
「調子のいいやつ」
くくっと笑った智成は意外と優しい目をしていた。
今日だけ、智成は私の恋人。
勇気出して言ってみて良かった。
茶化して周りに自慢したいなんて言ったけど、一日だけでも智成の恋人っていう夢が見たかった。
ウキウキとふたり連れだって歩くと、周りからはあ〜っと残念そうなため息をつく女子たち。
フフン、カッコいいでしょ私のカレシ。
自慢げな顔をしつつドキドキわくわく。
恋人ごっこが楽しみで仕方がない。


< 52 / 252 >

この作品をシェア

pagetop