キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
散々悶えた後、こんなことしてる場合じゃないとベッドからよろよろ立ち、ふと見ると会社に行ってくると置手紙がサイドテーブルにあった。
とにかく今は顔を合わせなくて済むと思うとほっとした。
よろよろしていた足腰は夕方には回復した。
智成はいつ帰ってくるんだろう?
昨日の甘い記憶が頭を占領して、私の過去話は一切吹き飛んでしまったかのように智成のことばかり。
プレゼントしてくれた一粒ダイヤのネックレスをいじりながら、早く帰ってきてと思う一方、まともに顔も見れないかもと不安がってみたり。
かなりの浮かれモードの自分に心配になる。
大丈夫? 私、大丈夫?
また、裏切られることなんて……。
智成はそうであってほしくないけど、絶対絶対、智成はモテるから、付き合うならそういうことも覚悟しておかないといけないんだろうな。なんて、気の早いことを悶々と考えていた。
そして、智成が帰ってきたのは夜の九時過ぎだった。
ちょっと疲れた顔して帰ってきた智成はすぐにお風呂に入り濡れた髪を拭きながらリビングに来てソファーにどさりと座った。
「ご飯は? 食べる?」
「いや、会社で軽く食べてきたから大丈夫だ」
私はというと声を掛けたはいいが、変に緊張してやっぱり目が合わせられなくてダイニングの椅子に座って固まっていた。
ごしごしと乱暴に髪を拭く智成を見て、昨日の甘い雰囲気が微塵も感じられないことに戸惑う。
あれ? あれはやっぱり妄想だった? でも、じゃあ、私は誰に抱かれたわけ?
そんな馬鹿な、と思いながら智成を観察する。

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