キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
どちらかというと不機嫌モードの智成はバサッとタオルをテーブルに放るとはあっと盛大にため息をついた。
仕事で何かあったのかな?
たまに不機嫌になることはあってもあんなに暗いオーラを纏っている智成は珍しい。
「コーヒーでも入れようか? それともお酒がいい?」
「いや……。茉緒、なんでそっちにいるんだ?」
「え? いやあ~、なんとなく」
今初めて私がダイニングにいるのを知ったみたいに智成は不思議そうな顔をする。
恥ずかしいとか、
気まずいとか、
近寄りがたいとか、
いろいろな意味で私はここから動けないんですよ。
それぐらい察してくださいよ。
「ここ、来て」
智成はなにも察してはくれなかった。
自分の横の座面をポンポンと叩いて私を誘う。
それに素直に従っちゃうんだから私ってちょろい。
智成の隣に座るとぎゅっと抱き寄せられた。
「と、智成?」
「はあ~、癒される」
私の肩に顔を埋めてまた盛大にため息をついた。
いや、私はわけが分からなくて混乱気味なんですが。
冷たい髪の毛が首や頬をくすぐってドキドキと心臓が暴れだす。
「ふっ、茉緒、すっごい心臓がバックンバックンいってる」
密着してる胸に振動が伝わって智成にバレてしまった。
っていうか、そこはかわいらしくドキドキと言ってくれませんかね?
笑う智成に顔を上げじとりと睨み無言の抗議。

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