キス魔な御曹司は親友の妹が欲しくて必死です
「言っとくけど、智成に惚れるのだけはやめておけよ。茉緒と智成が付き合うのは反対だからな」
「え? なんで、今更……」
多少文句を言われる不安はあったけど、お兄ちゃんが親友である智成と私が付き合うのを本当に反対するなんて思わなかった。
お互い信頼し合っていても妹とは付き合うのは許さないということ?
なんで初めに言わず、今になって言い出したのかがわからない。
「そうなんだよ、今頃気づいたんだ。智成はモテる奴だが、茉緒が惚れるかもなんてこと考えもしなかった」
腕を組んだお兄ちゃんはひとりでぶつくさと呟いている。
いやいや、今更そんな気づかれてももう遅いし、付き合うことになりましたなんて言い辛くなってしまったじゃないか!
「なんで? 智成と付き合うの反対なの?」
反対するには何か理由があるはずだ。
不思議そうな顔して本心を隠し、なんとか冷静に真相を聞きだしたい。
「あいつと付き合うと面倒くさいことになる。苦労するのは茉緒だし、結局別れる羽目になるんだ、わざわざ傷つくようなことにはなりたくないだろ?」
「別れるかもしれないってのは分かるけど、面倒くさいって、なに?」
恋人になったからって永遠に一緒にいられるわけではないと私だってわかってる。
特に智成はモテるだろうから付き合っていてもいろんな誘惑があるだろうしいつなにがあるかわからない心配も確かにある。できればずっと一緒にいたいと思うけど。
でも、面倒くさいってなに?
「あ~うん。あいつ見ての通りモテる奴だからあいつと付き合ったら浮気に泣かされるって話だ」
「それだけ?」
随分言葉を濁し、お兄ちゃんはありふれた答えを言う。
まだ何かありそうで薄目でお兄ちゃんをじっとりと睨む。

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