鬼麟
第2章
1.決心
雀の鳴き声が遠くで聞こえ、微睡みの水底に漂っていた意識が緩やかに浮上する。
「ん......」
ゆっくりと重たい瞼を持ち上げると、眩い光が無防備な眼球を焼いて思わず眉をしかめる。次第に慣れてしまえばあとは気だるさが残るだけで、しかし起きなければと体を起こそうとする。
起こそうと体を持ち上げれば重くのしかかるそれ。未だ正常運転とは言い難い脳みそがハテナを浮かべ、再度試してみるが結果は同じ。
何事だと言いかけ頭上から寝息が漏れていることに気付き、顔をそちらへと向けて今度こそ目が覚めた。
驚きは一瞬のことで、次第に昨日のことを思い出してその寝顔をじっと見る。
薄い茶色の髪はさらさらで、伸びた睫毛はふるりと震えて朝日に照らされている。整った顔立ちは寝ているときでさえも魅力的なのだから羨ましいと、悪戯心が疼いて鼻を掴む。
苦しいのか、唸るような声を上げるのがおかしいが、手を離してやればゆっくりと瞼が持ち上がった。
「......あ゛?」
寝起きだから掠れた声は不服そうで、安眠を妨害されたことへの怒りが滲んでいる。
綾は普段優しさの塊のような姿をしているが、寝起きがすこぶる悪いのだ。
頬をぺちぺちと叩いてやれば鬱陶しいとばかりにその手を掴まれ、シワの寄った眉間のままにじーっとこちらを見つめてくる。
「あー......棗か。おはよ」
ようやく現状を理解したのか、あくびを噛み殺して出たのはいつもの優しい声だった。
「ん......」
ゆっくりと重たい瞼を持ち上げると、眩い光が無防備な眼球を焼いて思わず眉をしかめる。次第に慣れてしまえばあとは気だるさが残るだけで、しかし起きなければと体を起こそうとする。
起こそうと体を持ち上げれば重くのしかかるそれ。未だ正常運転とは言い難い脳みそがハテナを浮かべ、再度試してみるが結果は同じ。
何事だと言いかけ頭上から寝息が漏れていることに気付き、顔をそちらへと向けて今度こそ目が覚めた。
驚きは一瞬のことで、次第に昨日のことを思い出してその寝顔をじっと見る。
薄い茶色の髪はさらさらで、伸びた睫毛はふるりと震えて朝日に照らされている。整った顔立ちは寝ているときでさえも魅力的なのだから羨ましいと、悪戯心が疼いて鼻を掴む。
苦しいのか、唸るような声を上げるのがおかしいが、手を離してやればゆっくりと瞼が持ち上がった。
「......あ゛?」
寝起きだから掠れた声は不服そうで、安眠を妨害されたことへの怒りが滲んでいる。
綾は普段優しさの塊のような姿をしているが、寝起きがすこぶる悪いのだ。
頬をぺちぺちと叩いてやれば鬱陶しいとばかりにその手を掴まれ、シワの寄った眉間のままにじーっとこちらを見つめてくる。
「あー......棗か。おはよ」
ようやく現状を理解したのか、あくびを噛み殺して出たのはいつもの優しい声だった。