鬼麟
「ゆっくりと話し合えば昨日のことのようなこともないでしょうし」

 いいえ、構って来なければこちらも噛み付いたりしませんよ。
 とは口が裂けても言えない雰囲気に、目を逸らして頷く他ない。
 転校してからこうして連行されることが多々あり、その度に蹴散らして逃げてしまうのがオチである。私とて安易に彼らと衝突することは避けたいのだが、根本的なことを理解してくれないのだ。
 拒めば拒むほどに絡む彼らに、鬱陶しさを通り越して呆れを抱いてるほどなのだ。
 他の生徒からはよく見る光景として馴染まれた感じが不服なのだが、かと言って彼らはもう何かを言ってきたりすることもなく彼らなりの日常として受け入れている。つまるところ触らぬ神に祟りなしというやつだ。
 屋上に着くなり私を皮肉るような晴天が眩しく、目を細めればくるりとこちらを向いた倖は満面の笑み蒼とレオを差し出した。

「はい、2人ともなんて言うんでしたっけ?」

 私の前に立つ二人はバツが悪そうにしているだけで、なかなか口を開こうとしない。
 疑問符しか浮かばない中、その後ろで見ている修人に視線をやれば彼の瞳には若干の同情が浮かんでいて余計に分からない。
 何か言いたいことでもあるのか。
 そう問いかけるより先に2人の尻に倖の豪快な蹴りが見舞われた。
 目を丸くさせるばかりだが、倖がずっと変わらず笑顔のままなのが怖いほどだ。いい加減にしなさいと、倖の声に腹を決めたのか2人は頭を下げた。
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