鬼麟
「「ごめん!」」

 目の前に並んだつむじを見下ろし、思わず口から漏れたのは情けない声だった。

「は?」

「棗ちゃんみたいな女の子、なかなかいないから珍しくってついからかい過ぎちゃった。ごめんね」

「レオは僕の家族だから......ムカッとしちゃってごめんなさい」

 申し訳なさと後悔がないまぜになったその声音に嘘はなく、心の底から謝罪していることが分かる。後ろにいた倖も同様に申し訳なかったと頭を下げるものだから、慌てて3人の顔を上げさせる。
 彼らだけが悪いわけではなく、非であればこちらにもあるのだから一方的な謝罪を受け入れるわけにはいかなかった。
 自身の過ちを認め、相手に謝罪を申し入れるその姿勢に筋の通った人たちだと感心する。

「私の方こそごめんなさい。怪我とか、しちゃってない?」

「えぇー!? なんでなっちゃんが謝るのー」

「怪我なら大丈夫、これでも頑丈だしね。お互いに謝ったことだし、おあいこってことでいいのかな?」

 こちらもまた頭を下げれば蒼が顔を上げてくれと言うもので、顔を上げればレオが先程までの表情とは違っていつものような飄々としたものに変わっていた。
 清々しいくらいに真っ直ぐな彼らに、誤解していたかもしれないと反省する。弱くとも、彼らの芯は思ったよりもしっかりとしており、それもきっと修人の存在があるからだろう。
 私たちのやり取りを口を挟むことなく見守る赤い瞳と目が合うと、それでいいと言わんばかりに細められた。
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