鬼麟

3.可能な範囲

 蒼と話し合った日から少し経ち、緩やかな日々を過ごしていた。
 レオの話によればどうやら蒼の“遊び”癖は頻度が落ちているらしく、変わることを選んだらしい。その変化は蒼自身の頑張りによるものだと言うのに、私が少なからずも貢献したと言うレオは嬉しそうだった。
 蒼に過去と傷痕を見せられてから、私は自身の罪の一部を彼へと見せた。それは公平さを見せるためだったのだが、今思えば早まったことをしたとも言いきれない。
 自身のバカ真面目な部分を呪いつつ、目の前で掛けられる圧から逃れる術を探す。

「もう一度聞きますよ。どうだったんですか?」

 先日期末テストが行われ、倖はその出来を問うてくる。
 不良のくせにテストを気にしてくるところが倖らしいのだが、それはあまりにも愚問だと言わざるを得ない。

「どうかと聞かれれば、どうということもないと言いますか......」

 口が裂けても言えるわけがないのだ。
 実はお勉強が大の苦手などと。

「そう言えば、テスト中ずっと頭抱えてたよね〜」

「棗ちゃんてば、唸りながらテスト用紙を睨みつけてたもんな」

 けらけらと、テスト時の痴態を見ていたらしい2人が笑う。それを糾弾しようにも事実なのだから、意味を為さないことは理解出来る。
 
「返却されれば分かることだろ」

 修人は私の頭を撫でるだけで、助け舟のつもりらしいそれは私にとっては助けにならない。私だって綾たちさえいれば、と悔しさに唸ったところでテストは変わらないのだ。
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