鬼麟
 蒼とレオは楽しみだねと言ってくるが、私にとっては死刑宣告を言い渡されるようなもの。見なくとも、悲惨な結果であることは予想出来ていて、それはいずれ現実となる。
 先生の声に重い足取りで受け取り行けば、とても申し訳なさそうな顔をされてしまう。期待を裏切ったことへの罪悪感に、わざとじゃないから許して欲しいと泣きたくなる。
 5教科分の答案用紙を手に席へと戻れば、蒼とレオは待ってましたとばかりに私の手から用紙をもぎ取った。もう見られたところで逆に恥ずかしくはないと開き直っていれば、2人は顔を見合わせたあとこちらへと向いてから曖昧に微笑んだ。

「なっちゃん......」

「いやあの、ね? うん、なんかごめん......」

 机の上に戻されたそれは見るに堪えない散々な点数のもの。
 まさか2人もここまで私の点数が惨憺たるものだとは思っていなかったらしく、言葉を選んでいるところが逆に突き刺さる。
 勉強なんて嫌いだ、と零せば蒼が慌ててご機嫌を取ろうとしてくる。

「なっちゃん、誰にだって苦手なことはあるよ!」

「名前だけで点貰ってるのに、苦手で済ませられごふっ」

 レオの冷静なツッコミに、蒼はその脇腹をどついて無理やりに黙らせる。
 レオが言うことは事実なのだから、それを今更否定するのも意味が無い。とはいえ、顔もよく頭までも良いというのは羨ましいと感じずにはいられない。

「棗ちゃん、人の顔見て舌打ちするのやめよう? それは結構普通に傷付くよ、俺」
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