鬼麟
 もっと撫でろとばかりに擦り寄る様は小動物そのもので、こてりと横になって膝の上に頭を預けられる。俗に言う膝枕なそれだが、クッションを使った方がいいのではと提案しても首を振られてしまう。
 目を擦りとろりととろけ出す蒼に、ベッドへと促そうとすればレオが茶々を入れる。

「棗ちゃん、男は膝枕が夢なんですよ〜」

 からかっていると分かっているからこそ相手にするのも面倒なのだが、レオの顔面にクッションを投げ付ければ撃沈する。
 膝枕なんて慣れていないからどうすればいいのかわからないのだが、膝の上で微睡む蒼の髪の毛を撫でながら手持ち無沙汰な気持ちに落ち着かない。そもそも慣れていないというよりも苦手なのだが、それを口にする訳にはいかないだろう。
 だがそんな私の我慢をよそに、身じろぎする蒼の髪の毛が擽ったくて思わず声が漏れる。

「んっ......」

 小さなそれは3人だけのこの部屋では十分よく通り、沈黙が場を包み込む。
 蒼の目は先程までの眠気はどこへやら、見開かれた瞳は驚きに染まっていた。レオはといえば投げ付けられたクッションを肘置きに雑誌を読んでいたが、その雑誌がぱたりと床に落としていた。
 2人の視線はゆっくりと私に向けられ、私の頬には熱が集まる。

「ねぇ今の、なっちゃん?」

「なにが?」

「棗ちゃん、顔赤いけど」

「そう、きっと熱があるだと思う」
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