鬼麟
 私の泳ぐ視線は宙を彷徨い、2人の視線は私を射抜く。壁に頭を打ち付けて記憶を消したいほどの羞恥心が、じわりじわりと頬を焼いて熱い。
 起き上がった蒼が太ももに手を添える。

「ひゃっ」

 擽ったさと唐突なそれに驚き漏れ出た悲鳴。
 言い逃れようのない沈黙が重く、2人の視線は次第にいたずらっ子のように私を捉えていた。

「なっちゃんの弱点まーた知っちゃったねぇ〜?」

「棗ちゃんてば太ももが弱いんだねぇ」

 小悪魔な蒼と、どこかいかがわしさを持つレオ。
 はいそうですなんて認められずに否定をしても、聞く耳を持たない2人は既に確信を得ていた。それどころか蒼に至っては艶かしい手つきのままに太ももを触ってくるもので、反論すらまともに出来なくさせられてしまう。

「あっれ〜? なっちゃんてばなんで口を押さえてるの?」

 平気なら押さえる必要ないよねと、私の手を口元から退かしてにっこりと微笑んでいる。それがなくなれば力の抜けたような声が漏れ、羞恥心がさらに込み上げてくる。
 離してと蒼を睨んでも、彼は嗜虐心に火を付けられたかのように私の反応を見て楽しんでいる。擽ったさに身をよじった程度では止まらず、かといって振りほどこうにも力も入らない。
 タチの悪い笑みを浮かべたレオが認めるのかと問う。生意気なその態度に苛立ちを覚えても反抗できず、声を上げないようにしながら覚えていろよと密かに誓う。

「ちょっと、苦手なっ、だけ!」

「なっちゃんは強がりさんだなぁ」
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