鬼麟
「まぁ色々と忙しかったからね〜」

 なにに、と言えば蒼はレオに視線を投げる。
 レオは呆れたとばかりに修人を見て笑い、次いで私を指さした。

「厄介払いっていうか、清算というか。なんにせよ棗ちゃんのためでもあるんだから、起きたら礼でも言ってあげてよ。たぶんすっごい喜ぶと思うよ」

 頭に浮かんだ疑問符が顔に出ていた私に、補足とばかりに蒼がだからねと続ける。

「なっちゃんて“ここ”を出入りしてるでしょ? 女の子が出入りしてるのはなっちゃんだけで、僕らって全国的に見ても結構高い位置にいるわけ」

 そこまで言われ、脳内で補完されてようやく話が繋がった。
 つまるところ問題は私が女であることと、彼らの懐にある女は私だけということ。どれだけ私が姫という役を拒もうと、外野から見れば既にその形は成されているのだ。
 私の素性がどうであれ、女がいるということで既に彼らの弱点として認識されているらしい。故に私は狙われていると言われており、あまりのことに頭が痛くなる。
 弱点として見られるということは、私が弱いと認識されていることである。あまりにも屈辱的なその評価に、私を狙っているという輩に片っ端から喧嘩を安売りしたい気分になる。

「ちなみに、今いない副総長さまはその厄介払いに行ってまーす。都合のいい八つ当たり先を見つけて浮き足立ってたけど」

 最後の一言を倖が聞いていたら恐ろしいことになっていただろうが、生憎と阿修羅はここにはいない。
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