鬼麟
 やはり兄弟は似てしまうものなのだろうか。
 吹っ切れた様子の彼は、私のことを少しだけ自身の領域に入れたらしく、その眩しさに頭の奥が痛んだ。私を受け入れるその優しが、私にとっては何よりも毒だということを、彼らにはまだ解らないのだ。
 彼のその変化を促したのは私で、だからこそ言うべきものを呑み込んでそれを肯定する。

「いいと思う」

 罪悪感で押し潰されそうなのは私も一緒で、火の粉が炎となる前に離れなければならない。
 倖がこれまでと違う晴れやかな顔をしているのが、せめてもの救いだった。

「たっだいまー!!」

 穏やかな空気を割るように、勢い良く開かれた扉から飛び出して来たのは言うまでもなく蒼だった。半ば感傷に浸るような中で、足音にさえ気付かなかった私と倖は驚きに目を丸くする。
 私なんて心臓が口からこんにちはしてくるんじゃないかと思ったほどだ。普通に入って来なさいよ。

「蒼、扉には優しくしろ〜」

 続いてレオと修人が入って来て、3人とも私たちを訝しげな目で見てくる。
 何かおかしなことでもあるのだろうかと思っていると、倖がいつもと変わらぬ微笑みを浮かべる。

「おかえり、遅かったね」

 そこには先程の宣言通り、敬語はなかった。小さいけれど、私なんかより共に過ごした時間が長いはずの3人が気づかないはずがないだろうに、彼らは顔を見合わせたあとにただいまと返すだけだった。
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