鬼麟
第3章
1.取捨選択
夏休みに入ると数字的に見ればあまり変わってないだろう気温も、心なしか数度上がったように感じてしまう。
肌にじんわりと汗が滲む鬱陶しさに、照りつける太陽をかたきの如く睨んでも気が晴れるわけでもない。蝉がいたる所でその生き様を晒しているせいで、伝う雫を拭うことすらだるくて仕方がなかった。
私は今、“鬼龍”の溜まり場となっている倉庫前にいる。そう、地元に帰って来たのだ。
「やっぱりなんか、変に緊張するな」
綾にも告げずに来たせいか、入りづらさが倍になっている気がする。
綾の話では私がいなくなってからも総長の席は空席のままらしい。とはいえ、いきなり飛び出して行った奴がいきなり戻って来るなり、総長として振る舞うのはあまりにも身勝手過ぎるだろう。
だから男装をしているのだと、自身の服装に目を落として苦笑いする。安直な考えに自身でも笑ってしまい、傍から見ればあまりにも滑稽に映るだろう。
「よし」
扉に手をかけ、呟いてから意を決してゆっくりと開く。重厚そうに見えるのは形ばかりで、意外にもあっさりと開いてしまうのがここの扉だ。
おずおずと顔を出してみれば、中には見知った顔ばかりだった。いくら離れていたとはいえ、時間的に見ればさほど長い期間ではなかったのだから当たり前だろう。
肌にじんわりと汗が滲む鬱陶しさに、照りつける太陽をかたきの如く睨んでも気が晴れるわけでもない。蝉がいたる所でその生き様を晒しているせいで、伝う雫を拭うことすらだるくて仕方がなかった。
私は今、“鬼龍”の溜まり場となっている倉庫前にいる。そう、地元に帰って来たのだ。
「やっぱりなんか、変に緊張するな」
綾にも告げずに来たせいか、入りづらさが倍になっている気がする。
綾の話では私がいなくなってからも総長の席は空席のままらしい。とはいえ、いきなり飛び出して行った奴がいきなり戻って来るなり、総長として振る舞うのはあまりにも身勝手過ぎるだろう。
だから男装をしているのだと、自身の服装に目を落として苦笑いする。安直な考えに自身でも笑ってしまい、傍から見ればあまりにも滑稽に映るだろう。
「よし」
扉に手をかけ、呟いてから意を決してゆっくりと開く。重厚そうに見えるのは形ばかりで、意外にもあっさりと開いてしまうのがここの扉だ。
おずおずと顔を出してみれば、中には見知った顔ばかりだった。いくら離れていたとはいえ、時間的に見ればさほど長い期間ではなかったのだから当たり前だろう。