鬼麟
 だが、基本的にという前振りがつく以上、基本に概しない者もいるわけで、よくそんな理由でというような輩も属している。
 基本に漏れたその中で、この最上位クラスに属するにはある一つの条件を満たせばいい。それは暴走族の幹部以上であることだ。
 どうやら、現理事長は元暴走族だったらしく、そういった者達の集うこの学校ならではの制度なのだとか。そんな制度どうなのかと思わざるを得ないのは、果たして自分だけなのか。
 しかし、少なくともそれがここの普通であるというのであれば、それは受け入れるべきルールで、口を出す気はさらさらない。それは教育委員会の仕事であるからだ。
 そんな色々ぶっ飛んだルールを作った理事長を、一目拝んで見たいと思うものの、私は未だに会うことはできていない。
 今朝のことだ。
 色々とこの学校へと転校する際に優遇してくれた方に対し、お礼も兼ねての挨拶をと深影先生に申し出ると、彼は首を横に振った。挨拶は不要であると。
 食い下がるほどどうしてもという理由もなく、大人しく引き下がりはしたものの、いつかは会ってみたいと思わなくもない。
 深影先生が教室内へと入って行くのを見送り、廊下での一時的な待機を言われる。
 騒がしい教室へと入った先生が離れたのを境に、一層刺さる視線に最早何も言うことは無い。視線には慣れているのだ。
 ちらりと一方向へと視線を投げかけると、慌てて目線を逸らす男。逸らすくらいなら見なければいいものの、それでも私が向き直るとまた見てくるのが鬱陶しい。
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