鬼麟
「はい、じゃあ篠原さんの席は、」
呆けた表情が多々見られるその空気を拭うように、緩い声が響き渡る。
空いてる席を探す先生に、一人の生徒がわざわざ手を挙げて存在を主張する。
「ミカゲン、ミカゲン! ここ! ここ空いてる!」
その人の指す席は、その人の後ろの席で窓際。ではなく、窓際から一つズレた席だった。
先生はその生徒の言葉に頷くと、じゃあそこで、と軽く言う。変な渾名のようなものを付けられているが、特に何も言うことはないらしい。
仕方なく先生に促され、その席へと着く。
すると先生はホームルームは以上と告げ、私に一度目配せをしてから教室を後にした。
ここで女子を一人残すとは、案外放任主義なのだろうか。別に私としてはどうでもいいのだが、これがもし普通の女子であるならば心細いことこの上ない状況だ。
「ねぇねぇ」
先生が教室から出て行くと同時に、そりゃあもう首が折れるんじゃないかって勢いで振り返る先程の生徒。
少し長めの前髪に、柔らかい目元はその好奇心を隠し切れていなく、髪と同じ淡い青の瞳が輝いている。その顔だけ見れば女の子と呼ばれることもあるのではないか。それに身長も恐らく私と同じくらいだ。
「僕、蒼! 空木 蒼!よろしく!」
なんだこいつ、こいつはなんなんだ。
思わず眉を顰めてしまう。
元気溌剌に、今しがたしたばかりの私の自己紹介と呼べない自己紹介を聞いていないかのようなそれに、唐突だということを差し引いても嫌悪しかない。
人の話を聞けと、言いたくなるがそれはまた別の人物によって遮られる。
呆けた表情が多々見られるその空気を拭うように、緩い声が響き渡る。
空いてる席を探す先生に、一人の生徒がわざわざ手を挙げて存在を主張する。
「ミカゲン、ミカゲン! ここ! ここ空いてる!」
その人の指す席は、その人の後ろの席で窓際。ではなく、窓際から一つズレた席だった。
先生はその生徒の言葉に頷くと、じゃあそこで、と軽く言う。変な渾名のようなものを付けられているが、特に何も言うことはないらしい。
仕方なく先生に促され、その席へと着く。
すると先生はホームルームは以上と告げ、私に一度目配せをしてから教室を後にした。
ここで女子を一人残すとは、案外放任主義なのだろうか。別に私としてはどうでもいいのだが、これがもし普通の女子であるならば心細いことこの上ない状況だ。
「ねぇねぇ」
先生が教室から出て行くと同時に、そりゃあもう首が折れるんじゃないかって勢いで振り返る先程の生徒。
少し長めの前髪に、柔らかい目元はその好奇心を隠し切れていなく、髪と同じ淡い青の瞳が輝いている。その顔だけ見れば女の子と呼ばれることもあるのではないか。それに身長も恐らく私と同じくらいだ。
「僕、蒼! 空木 蒼!よろしく!」
なんだこいつ、こいつはなんなんだ。
思わず眉を顰めてしまう。
元気溌剌に、今しがたしたばかりの私の自己紹介と呼べない自己紹介を聞いていないかのようなそれに、唐突だということを差し引いても嫌悪しかない。
人の話を聞けと、言いたくなるがそれはまた別の人物によって遮られる。