鬼麟

5.自業自得

 流されやすい自身の性格を恨みつつ、あとをついて行ってしまったのだが、辿り着いたのは駐輪場であった。
 学校内の駐輪場であるはずなのに、そこには自転車が1台も置いておらず、乱雑に並んでいるのはバイクばかりなのだ。学校としてどうなんだと、目を背けたくなる光景に後悔を滲ませる。
 じりじりと後退を始めた足に、不意に肩を掴まれてぎちぎちと油切れのブリキのように振り返る。にこやかに、されど笑っていない瞳で倖の手に力が入った。

「どうしました?」

 分かりきったことを聞くなと手をはたいてやりたいが、視線を逸らして口を開く。

「ちょ、ちょっと深景先生に話忘れたことが」

「それならあとでも構いませんよ」

 咄嗟の逃げの口実は甘いとばかりにぴしゃりと却下され、次いで出てきた言い訳もことごとく切り捨てられる。
 どれだけこちらが逃げようとしても、倖の方が一枚上手でありじわりじわりと退路を絶たれていく。
 しまいにはなにも思いつかなくなり、彼の手が離れたのを機に負けを認めて鼻をすする。ぽすりと置かれた修人の手を無視して悔しさ混じりに倖を見やれば、彼は心外だとばかりに肩を上げるのだから腹立たしい。
 腹のうちが読み切れない笑みに薄ら寒いものを感じつつ、停められたバイクに目を向ける。2台のバイクは大きさに多少の差があり、少し大きめなのが修人のだろうと当たりをつける。

「車でも良かったのですが」

 私の視線に気付いた倖がキーを取り出し、エンジンをかけると気持ちのいいエンジン音が響く。
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