猫耳少女は森でスローライフを送りたい
「よし! 追加分のポーションもできたわ!」
作業室の中で私は防護メガネとミトンを外す。
そして、汚れたビーカーを綺麗なお水で洗って、水切りカゴに入れた。
結局、一個はくまさんの治療に使ってしまったので、売り物用の初級ポーションは十九個。
「これを売れば、欲しいものも買えるわね!」
私がご機嫌で並べたポーションを眺めていると、頭の上に乗っているスラちゃんが、何か言いたげにぽよぽよ揺れた。
「だったら、あの道案内をしてくれるケットシーを今日中に呼んで、夕飯をご馳走してお泊まりしてもらうといいぽよ」
「あら。それは素敵ね」
どうせ食事をとるなら、みんなで賑やかに食べる方がいい。
そして、実は我が家には、たくさんのもふもふと暮らしたいと言った私への神様からの計らいなのか、寝室がたくさんあるのだ。
そんな話をスラちゃんとしながら作業室を出ると、ジャム作りをお願いしておいたくまさんから声をかけられた。
先日、小鳥さん達に集めてもらったベリーを、お砂糖にまぶしたままだったので、くまさんに作り方を説明した。まぁ、焦がさない程度に、煮るだけなんだけどね?
そして、私のポーション作りの合間に作っておいてもらったの。
「チセ! ベリーがとろとろになったよ!」
獣人姿のくまさんが、くりくりの目を輝かせて、笑顔で報告をしてくる。
あれよ。
『褒めて、褒めて!』って顔!
あー、可愛い!
「ちょっとヘラを貸してね」
そう言って、くまさんから木べらを受け取って鍋をかき回す。
「うん、とろりとしていい感じ!」
木べらを鍋の端でトントンとして、ヘラについたジャムを鍋の中に落とす。
そして、木べらを置いて、私はくまさんの方へ向き直る。
「くまさん、ありがとう」
そう言いながら、私はくまさんのまぁるい耳をそれぞれムニムニと揉む。
「??? えっと。ジャムが出来たのと、耳はどういう関係が?」
くまさんが、上目遣いで揉まれる耳を見ようとしながら、困った顔をする。
「こっちはね、可愛いから!」
「それだけですかっ!」
私の言葉に、プンスカしてガーッ! と両腕を上げてクマが襲う仕草をする。
「きゃー! ごめーん!」
しばらく、広いリビングの中を追いかけっこして戯れあって、最後にみんなで床に転げて笑い合った。
「なんで僕まで巻き込まれるんだぽよ〜」
私の頭の上から落ちてしまったスラちゃんが、ほっぺたをぷうと膨らませていた。
「さてっと。僕は狩りに行ってこようかな。チセ、今晩何食べる? 僕はお肉が食べたいな」
よいしょっと掛け声をかけて、くまさんが半身を起こす。
私もそれに促されて半身を起こし、床に転がっているスラちゃんを膝の上に乗せる。
「この辺りって、鶏って狩れるかしら?」
「この辺りなら、ホロホロ鳥が美味しいよ! 狩ってくるね!」
そう言うと、くまさんはそのまんま走って家を出て行ってしまった。
「全く、気が早いぽよ」
「ほんとね」
それにしても、ホロホロ鳥がメインだとしたら、何にしようかしら?
あと、捕まえたとしても、下処理とかできるのかなぁ。
ちなみに、私はスキルの知識では知っていても、実践したことはないので、ほぼ出来ないだろう。
「とりあえず、例の葉っぱでケットシーを呼ぶのが先ぽよ?」
スラちゃんが教えてくれたので、そうだ! と思いつき、私は頭の上にスラちゃんを乗せて、玄関脇の戸棚に置いてある、ケットシーにもらった草笛用の葉っぱを手に取った。
そして、玄関を開けて、ピィー! と何回か吹いて、ケットシーを呼んだ。
◆
そして夜。
オーブンを開けると、パリッと表面が焼けた丸どりが二羽姿を現した。
「チセ、すごいぽよ〜!」
「美味しそう! 僕頑張って捕まえたんですからね!」
えっへん! としているのは、くまさん。
「うわ〜! これは豪勢にゃん」
そう言って、口の端から、またつつーっと涎を垂らしそうになって、ゴシゴシするケットシー。
そう。今晩のメニューは、丸どりに野菜を詰めた、スタッフドチキンにしたのだ。
「はい、みんな手を洗って、椅子に座って待っててね〜!」
集まってきた子達を散らして、私は、焼けた丸どりをそれぞれ大皿に乗せて、ナイフを入れる。
そして、中から現れた、鳥の旨みを吸った野菜達を丸どりの周りに添えるのだった。
それらをみんなが腰をかけるテーブルに一羽ずつ載せたお皿を置くと、歓声が上がる。
「まだ待ってね。取り皿とシルバーを持ってくるから」
くまさん、ケットシーは椅子のうえで、スラちゃんはテーブルの上で、言いつけを守って待っている。
そこに、一人分ずつ、お皿と、ナイフとフォークを配っていく。スラちゃんはフォークだけ。
「チセ、もう食べていいぽよ?」
待ちきれない! と言った様子でみんなの視線が私に集まる。
「あのね。今日のこのホロホロ鳥さんはね、くまさんが採って来てくれたの」
そう。血抜きをした状態でくまさんが持って帰って来てくれたのだ。
私は、解体をしてくれるという、くまさんの好意に甘えて、それをお願いした。
そして、前世では本当の意味で理解していなかった『命をいただく』、ということを間近で確認した。
羽を全て綺麗にむしり、内臓を取り、内臓が収められていた体内を清める。
ホロホロ鳥だった二羽の鳥は、鶏肉になった。
「この鳥さんはね、その命を持って私たちに生きる糧をくれたの。だから、命をいただいてありがとうございます、って意味を込めて、みんなで『いただきます』って言ってから、食べたいの」
みんな、いつの間にか、じっと真面目な顔で私の言葉を聞いていた。
「そんな顔しない! さあ、食べましょう。いただきます!」
私が、パン!と手を叩いてお辞儀をして、いただきますと言うと、みんなが私に倣って、いただきますと言って今日の夕食に手を出し始める。
オーブンでじっくり焼いた、鳥も野菜も、みんなに美味しいと評判で、骨などの食べられない部分だけを残して、みんなで綺麗にいただいた。
作業室の中で私は防護メガネとミトンを外す。
そして、汚れたビーカーを綺麗なお水で洗って、水切りカゴに入れた。
結局、一個はくまさんの治療に使ってしまったので、売り物用の初級ポーションは十九個。
「これを売れば、欲しいものも買えるわね!」
私がご機嫌で並べたポーションを眺めていると、頭の上に乗っているスラちゃんが、何か言いたげにぽよぽよ揺れた。
「だったら、あの道案内をしてくれるケットシーを今日中に呼んで、夕飯をご馳走してお泊まりしてもらうといいぽよ」
「あら。それは素敵ね」
どうせ食事をとるなら、みんなで賑やかに食べる方がいい。
そして、実は我が家には、たくさんのもふもふと暮らしたいと言った私への神様からの計らいなのか、寝室がたくさんあるのだ。
そんな話をスラちゃんとしながら作業室を出ると、ジャム作りをお願いしておいたくまさんから声をかけられた。
先日、小鳥さん達に集めてもらったベリーを、お砂糖にまぶしたままだったので、くまさんに作り方を説明した。まぁ、焦がさない程度に、煮るだけなんだけどね?
そして、私のポーション作りの合間に作っておいてもらったの。
「チセ! ベリーがとろとろになったよ!」
獣人姿のくまさんが、くりくりの目を輝かせて、笑顔で報告をしてくる。
あれよ。
『褒めて、褒めて!』って顔!
あー、可愛い!
「ちょっとヘラを貸してね」
そう言って、くまさんから木べらを受け取って鍋をかき回す。
「うん、とろりとしていい感じ!」
木べらを鍋の端でトントンとして、ヘラについたジャムを鍋の中に落とす。
そして、木べらを置いて、私はくまさんの方へ向き直る。
「くまさん、ありがとう」
そう言いながら、私はくまさんのまぁるい耳をそれぞれムニムニと揉む。
「??? えっと。ジャムが出来たのと、耳はどういう関係が?」
くまさんが、上目遣いで揉まれる耳を見ようとしながら、困った顔をする。
「こっちはね、可愛いから!」
「それだけですかっ!」
私の言葉に、プンスカしてガーッ! と両腕を上げてクマが襲う仕草をする。
「きゃー! ごめーん!」
しばらく、広いリビングの中を追いかけっこして戯れあって、最後にみんなで床に転げて笑い合った。
「なんで僕まで巻き込まれるんだぽよ〜」
私の頭の上から落ちてしまったスラちゃんが、ほっぺたをぷうと膨らませていた。
「さてっと。僕は狩りに行ってこようかな。チセ、今晩何食べる? 僕はお肉が食べたいな」
よいしょっと掛け声をかけて、くまさんが半身を起こす。
私もそれに促されて半身を起こし、床に転がっているスラちゃんを膝の上に乗せる。
「この辺りって、鶏って狩れるかしら?」
「この辺りなら、ホロホロ鳥が美味しいよ! 狩ってくるね!」
そう言うと、くまさんはそのまんま走って家を出て行ってしまった。
「全く、気が早いぽよ」
「ほんとね」
それにしても、ホロホロ鳥がメインだとしたら、何にしようかしら?
あと、捕まえたとしても、下処理とかできるのかなぁ。
ちなみに、私はスキルの知識では知っていても、実践したことはないので、ほぼ出来ないだろう。
「とりあえず、例の葉っぱでケットシーを呼ぶのが先ぽよ?」
スラちゃんが教えてくれたので、そうだ! と思いつき、私は頭の上にスラちゃんを乗せて、玄関脇の戸棚に置いてある、ケットシーにもらった草笛用の葉っぱを手に取った。
そして、玄関を開けて、ピィー! と何回か吹いて、ケットシーを呼んだ。
◆
そして夜。
オーブンを開けると、パリッと表面が焼けた丸どりが二羽姿を現した。
「チセ、すごいぽよ〜!」
「美味しそう! 僕頑張って捕まえたんですからね!」
えっへん! としているのは、くまさん。
「うわ〜! これは豪勢にゃん」
そう言って、口の端から、またつつーっと涎を垂らしそうになって、ゴシゴシするケットシー。
そう。今晩のメニューは、丸どりに野菜を詰めた、スタッフドチキンにしたのだ。
「はい、みんな手を洗って、椅子に座って待っててね〜!」
集まってきた子達を散らして、私は、焼けた丸どりをそれぞれ大皿に乗せて、ナイフを入れる。
そして、中から現れた、鳥の旨みを吸った野菜達を丸どりの周りに添えるのだった。
それらをみんなが腰をかけるテーブルに一羽ずつ載せたお皿を置くと、歓声が上がる。
「まだ待ってね。取り皿とシルバーを持ってくるから」
くまさん、ケットシーは椅子のうえで、スラちゃんはテーブルの上で、言いつけを守って待っている。
そこに、一人分ずつ、お皿と、ナイフとフォークを配っていく。スラちゃんはフォークだけ。
「チセ、もう食べていいぽよ?」
待ちきれない! と言った様子でみんなの視線が私に集まる。
「あのね。今日のこのホロホロ鳥さんはね、くまさんが採って来てくれたの」
そう。血抜きをした状態でくまさんが持って帰って来てくれたのだ。
私は、解体をしてくれるという、くまさんの好意に甘えて、それをお願いした。
そして、前世では本当の意味で理解していなかった『命をいただく』、ということを間近で確認した。
羽を全て綺麗にむしり、内臓を取り、内臓が収められていた体内を清める。
ホロホロ鳥だった二羽の鳥は、鶏肉になった。
「この鳥さんはね、その命を持って私たちに生きる糧をくれたの。だから、命をいただいてありがとうございます、って意味を込めて、みんなで『いただきます』って言ってから、食べたいの」
みんな、いつの間にか、じっと真面目な顔で私の言葉を聞いていた。
「そんな顔しない! さあ、食べましょう。いただきます!」
私が、パン!と手を叩いてお辞儀をして、いただきますと言うと、みんなが私に倣って、いただきますと言って今日の夕食に手を出し始める。
オーブンでじっくり焼いた、鳥も野菜も、みんなに美味しいと評判で、骨などの食べられない部分だけを残して、みんなで綺麗にいただいた。