迷いの森の仮面夫婦

お料理教室でも先生に不器用な方なんですね、とはっきり言われる位料理が苦手。細かい作業に向かないのだと思う。

ベッドメーキングだけは昔から褒められたのに…何故…。
とにかく今日は海鳳の好きな物を好きなだけ作ろうと思った。だから生憎メニューのバランスは考えていない。

里芋の入っている豚汁。 チーズの乗っかったハンバーグ。 ベーコンとジャガイモのバター炒め。

それにこの間行ったイタリアンレストランで海鳳が好きだと言ったバーニャカウダーにも挑戦した。

見た目は余り良くないが、大切なのは味だと自分を納得させた所で海鳳から「今から帰るよ」と連絡が入る。

「きゃっ!急いで準備しないと!!!」

午後十九時十分前、インターホンが鳴る。
ケーキの蝋燭を立てて火をつけ、部屋の電気を消す。

「ただいまー、雪穂…?ゆき…」
「ハッピーバースデー!海鳳!三十四歳おめでとう!」

ケーキを持って登場すると、海鳳は目を丸くしてジッと不細工なケーキに見入った。 そして直ぐに柔らかい笑顔を作るのだ。
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