迷いの森の仮面夫婦

「早く吹いて吹いて~~~!!」

海鳳がふ~っと息を吹きかけ蝋燭の火を吹き消すと、ぱちぱちと拍手しながらリビングの電気を点ける。

「ハッピー’ビスディ’だな。アハハ」
「あ~…もう!ジッと見ないでよっ…!綴り間違えちゃったの」
「ふふ。か~わいい……」

ケーキを持って嬉しそうにする海鳳はまるで子供みたいな顔をした。
そして直ぐに私の格好に気が付き、目をぱちくりと瞬かせる。

「あ、これ?どう似合う?今日はメイドさんの服装をしてみましたあ!
今日の主役は海鳳! 私は何でも言う事を聞くメイドさんという事で、ご主人様なんなりと何でもお申し付け下さいっ」

今年二十六歳になる女がメイドのコスプレっていうのも大分痛いとは思う。 しかもこれはドンキで買ってきた安物のコスプレである。

しかし今日は恥じらいを捨ててくるりと一周回って、姿勢良く頭を下げる。 顔を上げると、海鳳はお腹を抱えて笑ってた。

「ふ、ふはははは…。本当に面白い事してくるなぁー…」

「やっぱり変だった?」
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