迷いの森の仮面夫婦
「本当に美味しい!」
「大丈夫?何度も何度も味見したんだけど、味見すればするほど味が分からなくなっちゃって。」
「マジだよ。こんなに自分の好きな物ばかり一気に食べるの初めて。
うーん、本当に美味しい。それにしても雪穂、短期間でこんなに色々な料理が作れるようになってすごいね」
褒められて少し得意な気持ちになってしまう。 やっぱりお料理教室通って良かった!
「えへへ、でもまだまだだけどね~。 ケーキも全然膨らまないでぺちゃんこになっちゃうしさ」
「そうだ!ケーキもあるんだ、食べなくちゃ。 いやぁ、これじゃあ俺太っちゃうな。 こんなに美味しいご飯を食べて、幸せ太りだ」
「大丈夫大丈夫。 それに海鳳が太ったら私がダイエットメニューを作るもんね!
海鳳の健康は私が守る!」
「アハハ、頼もしい。俺の主治医だな、雪穂は。
本当にありがとう。こんなに嬉しい誕生日は初めてだ。」
海鳳のブラウンの瞳が優しく揺れる。 何度だって見惚れてしまいそうな笑顔だ。 こんな顔をしてくれるなんて、頑張った甲斐がある。
全然膨らまなかったケーキも、味はすっごく美味しいと褒めてくれた。