迷いの森の仮面夫婦

「でも海鳳は家族でもっと豪華な誕生日パーティーしてもらってたでしょう?」

「う~ん…。なんていってもうちは凪咲が主役だったからな。 女の子だし、両親にも可愛がられてたから。
それに小さい頃から凪咲の方がずっと快活で、俺は凪咲の後ろに隠れちゃってる照れ屋な男の子だったから」

「そういえば、見せて貰ったアルバムでも海鳳無表情なの多かったね。でも照れちゃってる小さな海鳳可愛いけど…」

「勉強もスポーツも凪咲の方がずっと得意だったんだ。
俺はどっちかっていうとピアノとか本を読む方が好きで、悪く言えば暗い子供だった。だから両親からも何考えているか分からないってよく言われてた。
そんな風に育ってきたからあんまり自己主張も出来ない大人しい子供だったんだ。
けれどさ、幼馴染の桜子がいっつも俺が一人でいたら連れ出してくれようとしたり、色々と世話を焼いてくれたんだ」

桜子さんの名前を出されて、思わず分かりやすく動揺してしまう。

付き合い始めた時、忘れられない人が居る。その人の事がずっと好きだと思う。 それが桜子さんだという事は一度だけ聞いた事がある。

でもこうやって詳しく彼女の話をしてくれたのは、今日が初めてだった。
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