迷いの森の仮面夫婦
「見てーっ!海鳳、景色がとっても綺麗!」
「おぉ、相変わらずすげーな。 色々な所に旅行に連れて行って貰ったけど、父親は温泉好きだったから近場といえばよく熱海に来てたんだ」
「いいなぁーっ。私なんて熱海初めてっ…
でも初めての熱海を海鳳と一緒に来れて嬉しいけど」
一緒に来た初めての場所は、どこだって特別な場所になる。
顔を上げて海鳳を見つめると、にこにことしながら彼は私の頭を撫でた。
結婚してからずっと感じていた彼の優しさ。だけど、先月の海鳳の誕生日以来ちょっとした変化があった。
彼が私を抱く時、名前を呼びよく顔を見るようになった。 嬉しいけれど、少しだけ複雑な気持ち。
幸せになればなるほどそれを失うのがすごく怖かったから。
「私客室露天風呂も初めてだし」
「じゃあ、後で一緒に入ろうな」