迷いの森の仮面夫婦

「そうね。そうか、知ってたか。
桜子ちゃんは昔からよくうちに来ててね、私達にとっては幼馴染だったけど海鳳にとっては特別な存在だったかもしれない。
私は海鳳の気持ちをよく知っていたけど、海鳳と桜子ちゃんがどうこうなったりとかは思った事なかったし、望んでなかった。
だって私は桜子ちゃんが好きじゃないから。海鳳の気持ちをずっと知っていながら、付かず離れずの距離を保って、結局は違う人と結婚しちゃったでしょう?
その度に海鳳が可哀想で、桜子ちゃんの事…好きになれなかった」

「そう…ですか」

桜子さんの話をすると、凪咲さんの顔は曇る。それでも家族でも気が付いていたくらい、海鳳にとって桜子さんは特別な存在だったんだ。

今も昔も、それだけはずっと変わらないんだ。

「でも、雪穂ちゃんが気にする事じゃないわよ。 今は海鳳は雪穂ちゃんの事が好きで、結婚して二人はすごく幸せそうだもの。
だから不安になる事なんて一つもない」
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