迷いの森の仮面夫婦

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居酒屋で凪咲と別れてから、取り合えず自分に出来る事をしようと思った。
まずは、北海道の雪穂の両親に明日連絡を取ろう…。

病院の彼女が仲が良かった科のナースにもそれとなく訊ねてみたりして、自分が出来る事は全部やろう。

君を、もう諦めたくはないんだ。
君にもう他に相手がいたとして、諦めなくてはいけない状況にあっても
人生に一度切り、本当に欲しい物を欲しいと駄々をこねてもいいんじゃないか。

凪咲と別れた新宿東口は賑わいを見せていた。   ’そういえば…’ふと足を止めたのは、薄汚い路地裏の一角にある古びたビルだ。

’すごく当たるんだよ’とは飲み会でとある科のナースが言っていた。
占い師の名は坂上マキ先生。 記憶力ならば昔から良い方だから、よく覚えている。

酔っていたとはいえ、占と書かれたどうにも胡散臭い扉の前で足を止めて、あの時はどうしようもない想いを抱えここに入ったのだ。
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