迷いの森の仮面夫婦

さっきも言ったが、記憶力は悪い方ではない。寧ろ小さな頃から記憶力だけがずば抜けてよく、小学生の頃なんて教科書丸まる一冊覚えていた事もある。

可愛らしい目元だ。 大きく垂れ目で黒目がちな瞳は印象に残る。
「学生時代からの親友なの!」と、結婚式で彼女が紹介してくれた事を思い出す。 名は確か…。

「…西松さん…?」

「どうしてたった一回きりしか会ってないのに覚えちゃってんですか…」

「すいません、無駄に記憶力だけはいいもので…
でもどうして、西松さんがここに?」

その場で彼女が大きく頭を抱えた。
そして観念したように答えたのだ。

「私が、アイリーンです。 …早乙女先生の記憶に残るアイリーンとは少し違うでしょうけど…。
ごめんなさい、雪穂と結託してあなたを騙していました…」
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