迷いの森の仮面夫婦
そして腕時計を見て「そろそろかな?」と首を傾げる。
何?と言う前に無理やり私の頭にウィッグを被せ、ベールを口元へ押し付けた。
髪が長かった頃はこのウィッグを被るのにも一苦労したのに、ばっさりと切ったせいかフィット感が違う…。ってそうじゃなくって。
「愛莉、どういうつもり?!」
「シッ。そろそろ来ると思うから。
今日、二十時半、早乙女 海鳳さんからアイリーン先生を指名でって予約が入ってるのよ」
「は?はぁーーーーー?!」
―――――
一体どういう状況で今こうなっているか、頭の整理が追い付かない。
しかし二十時半ぴったり、海鳳は本当に占いの館にやって来たのだ。 表情を見る限り、お酒も入っていないし素面だ。
もう二度とここには来ないと思ったし、アイリーンとして彼に会う事もないと思っていた。 それに今日は愛莉に呼び出されて、海鳳から予約が入っているという事も知らされていなかった。