迷いの森の仮面夫婦
またこんな匂わせのような事を言って、未練たらたらではないか。
海鳳の事を本当に想うのならば、アイリーンに助けを求めに来た時点で曖昧な言葉を言っては駄目だ。
まだまだ自分を良く見せたくて、海鳳との繋がりを絶ち切れない。 そんな風になりたくなかったから、家を出たというのに。
テーブルに肘をついて、それを口元に寄せて組んだ。
ジッと私を見つめる視線に、戸惑いを隠せない。 …海鳳、まさか私が雪穂だって気が付いていないよね?
「…結婚が決まった早乙女さんには言えなかったですけど…
この結婚は良くありませんでした。
いや、全然駄目。 うまくいくはずがないんです」
「先生?」
「あなたと結婚した女性はどうしようもなく嘘つきで傲慢で、どうしようもない女性だったんです。
だから、別れて正解です。
早乙女さんが悪いわけじゃない。その女性が全部悪い…」