迷いの森の仮面夫婦
訊きたい事は沢山あったはずなのに、今私はアイリーン先生として彼と向き合っているからそんな事聞けない。
いっそ自分がアイリーンだって暴露してしまおうか…。というかそもそも海鳳は私がアイリーンって知っているんじゃあ…?
色々な想いが頭を巡らせ、暫く沈黙が辺りを包む。 やっぱり先に口を開いたのは、海鳳の方だった。
「雪穂なんだろう…?」
「あ、え…、海鳳…何で!」
名前を出してしまって、両手で口を塞ぐ。けれどそれも手遅れというもので
「先月ここに訊ねて、西松さんに全部聞いたよ。
アイリーン先生が雪穂だったって事も
ラスベガスで俺達が出会ったのも、全部偶然なんかじゃなかったんだろう…」
物静かな声のトーンと、何を考えているのか分からない海鳳の表情。
全然掴めない。
観念したように金髪のウィッグを取り、顔を覆っていたベールを外す。
髪を短く切って茶色に染めたその姿を見て、海鳳は椅子から立ち上がり驚いた。