迷いの森の仮面夫婦

自分が情けなくて、顔を上げられなかった。
意味なく散らばっているタロットカードを見つめながら、取り合えず言い訳をしている。
本当は顔を見て謝らなくちゃいけないけれど、海鳳に軽蔑をされるのが怖い…。

「雪穂…」

「私っ…本当に怖くて…
ずっと海鳳が好きだったけれど、全然好きじゃない振りして一緒にいるのも辛くて
それでもいいって、桜子さんの身代わりでいいから海鳳の側に居たいって思ったのに段々欲張りになっていく自分がいて…
海鳳を失いたくない自分がどこかにいて
そんなのおかしいよね、最初っから手にしていないのに失うのが怖いなんて」

テーブルの上を涙の粒が埋め尽くしていく。

「雪穂…顔を上げてよ。 そんなに謝らなくっていいんだ」

優しい声が頭の上を降り注ぎ、恐る恐る顔を上げる。
ばちりと目が合ったら、海鳳が優しく微笑んで私の頭を撫でた。
その手の温かさに安心して、ぽろりと頬に涙がつたっていくのが分かった。
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