迷いの森の仮面夫婦
私の体を抱きしめる両腕が僅かに震えている。 彼の顔を覗き込むと、唇を噛みしめていて今にも泣きだしそうだった。
…どうしてそんな顔するの…? 海鳳の目の縁が赤く染まっていって、眉を下げて僅かに目を逸らす。
そっと両手を彼の頬に手をおくと彼の茶色の瞳に薄く涙の膜が張っていく。
「雪穂に…話したい事沢山あるんだ。
それに、雪穂に教えて欲しい事だっていっぱい…。
どうしてあんなに一緒に居たのに肝心な所でいつも向き合えなくて…」
「かいほ……私」
「もう一度やり直すチャンスを俺に下さい。
今度こそ必ず君を幸せにしてみせる。
もう一回だけ、俺と結婚から始めて下さい。 俺は、雪穂を愛している…
いつの間にかこんなにも君を愛していたのに、それをずっと伝えられなかった…」