迷いの森の仮面夫婦

「ごめんって。でも本当にいつの間にかで、自分でもよく分からないんだ。
雪穂とは最初から一緒にいて楽しかったし、楽だなぁとは思っていたんだ。
だから突然離婚届を置いて出ていかれた時は、何をやっても手がつかなかったし…一人でいるのは寂しかった」

「それは…本当にごめん…。
でも私なんて子供の時からずっと海鳳の事が好きだったんだからね。
そう考えたら気持ち悪すぎるほど一途だけど…あの日、早乙女家の広い庭で海鳳に初めて出会って
お姫様みたいだって言われた時からずっと海鳳の事が好きだったんだ。
そう考えると初恋が実るって奇跡だね!!」

思わず力説をしてしまうと、何故か海鳳は気まずそうな表情をする。

繋いでいた手をパッと離すと、私の顔を見ずに背中をくるりと後ろへ向ける。 その背中が僅かに震えている。

「え…何で手を離すの?…寂しい…」

くるりと先回りして海鳳の顔を覗き込むと、何故か口元を押さえて笑いを堪えている。
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