迷いの森の仮面夫婦
「ふっ…くくっ…あはは…!」
「な、何で笑ってんの?私変な事言った?」
「雪穂が五歳の時に、実家で俺と会ったんだっけ?
雪穂をお姫様みたいだねって言って、庭に咲いていたコスモスの花をあげたって」
「そ、そうだよ…。そりゃあ海鳳にとってそんな小さな時から好きだなんておかしいって思うかもしれないけどっ…。
あの日の海鳳は童話から出て来る王子様みたいで、素敵だったんだもん」
数回私の頭を撫でると、背丈に合わせて彼が腰を曲げる。 ぱちりと視線が合うと、また小さく笑った。
「な、なに?!」
「それ、俺じゃあないよ」
「へ……?どういう事…」
「雪穂が五歳だったら、俺は十二歳かそこらでしょう?何かその話聞いた時変だと思ったんだよね。
俺は記憶力は良い方だし、もう大きかったから忘れるかなぁって
でも雪穂にその話を何度聞いても思い出せなくってさ。
この間、凪咲と話す機会があって…その時凪咲が白状してたよ」