迷いの森の仮面夫婦

「え……まさか…」

そこまで聞いて、最悪の予感が頭を過る。

「中学を卒業する頃から背が伸び始めて、凪咲とはあんまり似ていないって言われてたけど
それまではそっくりだったんだ。小学生の時は特に
だから母さんがホームパーティーなんて開くたびに、凪咲はピアノの発表なんてしたくないって言う事があって
互いの服を交換して、入れ替わったりしてたんだ。 なんか雪穂の話を聞いてもピンとこなかったから、この間凪咲の話を聞いてやっと腑に落ちた」

海鳳の両手をぎゅっと強く握りしめると、真剣な顔をし訊ねる。

「私が会ったのって、凪咲さん?」

こくりと頷いて、また海鳳は肩を揺らして笑う。
とんだ赤っ恥である。

まさか私が幼い頃に恋をした王子様が、海鳳に扮した凪咲さんだったなんて。
その場にへたり込むと、大きなため息が漏れる。 …やっぱり私って相当間抜けだ。
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