迷いの森の仮面夫婦

「おいおい、勝手に人をジジイ扱いするなって。 そういう事じゃなくって…俺はもっと二人でゆっくりするのもいいかなぁって思って。
せっかく雰囲気の良いホテルだし、さ」

そう照れくさそうに海鳳が言った。

「うん?」

お肉や海鮮を口に頬張り目をぱちくりさせると、彼は私の鼻をつんと指で突いて、また恥ずかしそうに目を伏せる。

「せっかくの新婚旅行だし、中々外国は来れないから観光をするのも楽しいんだけど…
雪穂…昼間に騒ぎすぎて…ホテルに帰って来たらすぐに寝ちゃんだもん。
ホテルでもゆっくりと過ごせるようにって良いホテル取ったのに」

拗ねたように唇を尖らせる海鳳を見て、胸がきゅんと高まった。
それってつまり…私と二人でゆっくり時間を過ごしたいって事じゃんかね。
日本に帰ればいつだって一緒なのに、旅行先でまで私と一緒に居たいと思ってくれるなんて――

「海鳳ってば…  いつだって私の事独り占めしたいの?」
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