迷いの森の仮面夫婦
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入籍をして結婚式を挙げた現在私は二十五歳の冬を迎え、その時海鳳は三十三歳になっていた。
結婚式を終えた私達は二次会三次会と付き合わされて、夜中やっと新居に帰って来る事が出来た。
二LDKの賃貸は最寄駅からも近く、何よりも陽当たりが良かったので二人の意見が一致して借りたマンションだ。
まだまだ全ての家具は搬入しきっていないから殺風景に見えるけど、生活に不便がない程には揃えられた。
結婚後も変わらずに、夫婦揃って幕原中央総合病院に勤務する予定だ。
…子供は作らない。 それが結婚を決めた時に二人でした約束の一つだ。 今でも胸が痛い。 いつだって痛くなるけれど、海鳳と一緒に居られるならば痛みさえも呑み込んでいつか喜びに変えたい。
「海鳳、先にお風呂入っちゃう?」
「ん~~……」
二次会、三次会と飲まされ過ぎたせいか、少しだけ目がとろんとしている。
ソファーに寄りかかり、彼は私を見上げいつも通りの柔らかい笑顔を作る。
付き合い始めて、直ぐに結婚をした。 今日まで何度も抱き合ったはずなのに、何度抱かれたって初めて抱かれた日の様に涙が出そうになるような切ない気持ちになる。