迷いの森の仮面夫婦
「雪穂が先に入って来ていいよ。 何か珈琲がすごく飲みたい気分」
「じゃあ、私が淹れるから海鳳は休んでいて」
「いいよ。雪穂も疲れてるだろう? 珈琲を用意しておくから、ゆっくりとシャワーを浴びておいで」
「ありがとう!じゃあ、先にシャワー浴びて来る!
あ!その前に今日分けて貰った花束を花瓶に入れなくっちゃ!」
花嫁のブーケとは別に、会場に飾ってあったお花を何本か分けて貰った。
段ボールにまだしまわれたままの花瓶を取り出し、そこには数本の淡いピンク色のコスモスが揺れている。
「変わっているよな、コスモスなんて。 結婚式ってもっと華やかな花を選ぶ物ばかりだと思ってたけど」
花瓶の中でゆっくりと揺れるコスモスを見つめ、海鳳が目を細める。
「一番好きなお花だから」
淡いピンク色のコスモスは、特別なお花。
だってあなたが初めて私にくれたものだったから。