迷いの森の仮面夫婦
第三章 ここに愛はないけれどあなたに安らぎをあげたい
第三章 ここに愛はないけれどあなたに安らぎをあげたい
そして現在
夏にした逆プロポーズから約半年後の冬、私達は結婚して夫婦になった。
初め、海鳳は私の突然のプロポーズをどっきりか何かと勘違いしたらしい。
「海鳳見て、これバレンタインチョコレート」
結婚して初めてのイベントはバレンタインデーだった。
私の作ったトリュフを見て、仕事帰りの海鳳はにっこりと笑って「ありがとう」と言った。
今日はいくつかのチョコレートを持って帰って来ると予想はしていたけれど、彼の右手には紙袋があってチョコの包み紙がちらりと見えている。
さすがは院内のアイドル’早乙女先生’だ。 結婚したことは余り関係ないらしい。
彼の手に持っている紙袋を見て私が苦笑すると「本命っぽい物は貰っていないから、全部義理だよ」と彼は言う。
愛し合って結婚した二人じゃないけれど、彼はこういう気遣いをいつだって欠かさないのだ。
夕飯を食べ終えた後、海鳳は何より一番に私の作ったチョコレートを食べて「美味しいよ」と言ってくれた。
「やっぱり私お料理教室に通おうかな…」
「そんなのいいって」