迷いの森の仮面夫婦
「今は欲しい物はないけどねっ、観たい映画があるの!ほら、この間海鳳もテレビのCMで観たいなって言ってたやつ!
それにね、新宿に出来た新しいカフェがすっごく可愛い内装をしててね、ケーキも美味しいって評判なんだって!」
私の何気ない話にでも海鳳は優しい笑顔を向けて相槌を打ってくれる。
そういう些細な出来事が、堪らなく嬉しくなる。
「結婚って案外いいものだね」
私の話を聞きながら海鳳が何気なく口にした言葉に、思わずハッとしてしまう。
「え?」
「最初はすごくびっくりした。 ラスベガスで会った君と、病院にいつもいる君は全然違う人に見えたし
逆プロポーズなんて初めてされて最初はすごく戸惑ったけれど、お医者さんと結婚したいとか、隠さずに自分を強欲な人間って言って見せたり
雪穂の言葉も表現もすごく正直でストレートな人なんだなって思った。
君は嘘のない人だから、この先もパートナーとして信じられるなって思ったんだ。」