言いましたが、 違います‼︎


「大丈夫ですよぉ。私、勝てない喧嘩が買わないんで」

ニコッと笑って三枝さんに言う。

「そう言う事じゃなくて」

三枝さんが言うのと同時に

「美紗都ちゃん」と呼ばれる。

聞き覚えのある声に振り向くと品のある優しい顔の女性が立っていた。

奥様方がピシッとする。
心なしか三枝さんも少し緊張しているよう。

「香澄(カスミ)さぁん‼︎お久しぶりですぅ」
「やっと来たわね。お父様からお話を聞いてずっと待っていたのよ」
「ずっとってここ3歳からじゃないですかぁ‼︎」

私は慎太郎を呼ぶ。
豪くんが慎太郎と手を繋いでやって来たので挨拶する。

「慎太郎です」と私が言えば、慎太郎が「です」とお辞儀をする。

ウチの子優秀。

香澄さんは慎太郎の前に膝をつくと

「えんちょうせんせいだよ」

と豪くんが慎太郎に説明する。

「こーちゃ」と挨拶をすれば、
香澄さんは「こんにちは。慎太郎に会えるのを楽しみにしていました」とタッチをする。

そして、私を見て

「さすが美紗都ちゃんの子ねぇ」

と感心する。

でしょぉ!

三枝さんが私を突き、「どう言う事?」と説明を求める。

「パパのパパ。お祖父様の妹さんの旦那さんの妹?」

系図を手で追いながら説明する。

実は私もいまいち把握出来ていない。妹なんだか、弟の嫁なんだかわからない。

でも
「幼稚園を開く時に、お祖父様がこの土地を
提供したんです」
「えっ」

三枝さんと奥様方の声が重なる。

「永太郎と結婚した時、パパからこの土地の名義を私に変えたので、実質ここは私のです」

ニコッと笑う私。
固まる奥様方。
呆れる三枝さん。

「あんたがお嬢様って事、忘れてたわ」
「忘れないでくだぁさぁいぃ」

平穏な幼稚園ライフは、確約された。

< 113 / 124 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop