言いましたが、 違います‼︎
このまま着いて来られては困る。
だからと言って遠回りをして帰りたくない。
最短距離で家に帰って、お風呂に入ってスッキリして、ベッドに飛び込みたい。
警戒心を露わにすると、男は免許証を私に突き出した。
【進藤 永太郎(シンドウ エイタロウ)】
名前を声に出す。「僕の名前ね」
次に住所を見る。「げっ、まじ?」
「あんたがどこに住んでいるかは知りませんが、僕も家に向かっているだけなんで」
ご近所だった。
私に家と目と鼻の先。
多分、お互いに気付かすにすれ違っていたレベル。
父所有のテラスハウスに悠々自適な一人暮らしを手放したくない。
どうしたものか?
いっそのこと
事故に見せかけてこの男を殺してしまおうか?
「物騒なこと考えないでね。あんたに興味ないんで」
「こっちだって、こんなおっさん興味ないわよ‼︎っていうか、あんたっていうのやめてくれない。ムカつく」
「じゃぁ、なんて呼ぶの?山で遭難した人?」
「遭難してないわよ‼︎ちょっと道に迷っただけでしょう‼︎それに私には根津 美紗都(ネズ ミサト)って言うちゃんとした名前があるわよ」
「美紗都ちゃん?」
「気安く呼ばないでよ」
なんてやりとりをしている間に家が見えた。
途中でコンビニに寄るつもりが通り過ぎてしまった。
今から戻るにも不自然過ぎる。