言いましたが、 違います‼︎
頭を深々下げて立ち去る。
私、赤の他人ですけど!
と叫びたかったけど、
スヤスヤと眠る赤ん坊の手前大声で叫ぶのもと躊躇する。
「陽子ちゃん‼︎」
永太郎が陽子を呼び止める。
陽子は立ち止まる。
「陽子ちゃんは、悪くないよ。
僕の所に慎太郎を連れて来てくれてありがとう。
いつでも慎太郎に会いに来て。
気が向いたらでいいから」
陽子はこちらを振り返るとまた深く頭を下げてた。
その光景をただドラマのワンシーンを見ているようだった。
目を覚ました赤ん坊のぐずり声で我に返る。
永太郎を見ると慣れた手つきで赤ん坊をあやしていた。
「何いい人ぶってるの?
そんなに簡単に受け取っていいわけ?
この子の人生を簡単に背負っていいわけ‼︎」
永太郎は「いいんだよねぇ」と赤ん坊に言い聞かせるように言う。
「陽子ちゃんはしっかりした子だから、大人っぽく見えるけど。
また20歳にもなってないんだよ。
いつもお姉さんに振り回されて、可哀想な子なんだよ。
そんな子にこれ以上誰かの責任を背負わせるのは酷だよ」
「ねぇ」と赤ん坊に言う。
「巻き込んだついでに、その荷物持ってよ」
永太郎が陽子が置いて行った鞄を指す。