言いましたが、 違います‼︎


さっきまで持っていた大きな鞄に赤ん坊。

これで鞄を持つことは出来るが、ここでさようならするほど白状ではない。

「しょうがないわねぇ」

鞄を持ち上げる。「重っ」


「じゃぁ、お家に帰ろうねぇ」

鞄を置いて、歩き始める永太郎の後を追う。

私の家の横にある、いつ取り壊されてもおかしくないアパートだった。

「早く」と永太郎に急かされる。


永太郎の後を追い、部屋に上がろうとした。

「ちょっと待っててね」

部屋の電気をつける。
時間が止まる。

「ちょっと待った‼︎」

思わず大きな声で、赤ん坊を床に寝かそうとする永太郎を止める。

「ちょっと待って。この部屋のここに赤ちゃんを寝かせるの?」

「どう見ても、布団ひきっぱなしよね」
「あぁ、いわゆる万年床だな」
「だなじゃないわよ‼︎こんな汚いところに寝かせるなんてどうかしてるわよ‼︎」

永太郎が“はぁ”と深いため息をつく。

今から掃除でもするか?

永太郎が部屋を見回す。

「やっぱりまずいかぁ」

と呟く辺り自覚があるだけマシなのか?

掃除という名の荷物を横に避ける。

私に方が“はぁ”だよ。

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