言いましたが、 違います‼︎

5-2



三枝さんは30分も経たないうちにやってきた。大きな荷物を両手いっぱい抱えて。

私から赤ん坊を受け取ると、慣れた手つきでオムツを交換して、ミルクを与え始めた。

勢いよく飲む赤ん坊。

「いっぱい泣いて喉が渇いたねぇ」

さっきまで泣いていたのが嘘の様に大人しく飲み始めた。

「で、何がどうなって、こうなったの?」

三枝さんの優しい口調に、緊張の糸が緩む。

今日の出来事を一気に話す。

「つまり
 お手軽登山に行ったら迷子になって、助けてくれた人と一緒に帰って来た。
そしたら、お隣さん。
相手の家の前で子供を押しつけられて、荷物運びを手伝ったら、汚すぎて掃除の間、この子を預かる事になったって事?」
「はい」
「で、その男は?」
「あそこです」

窓から見えるオンボロアパートを指差す。

三枝さんは、引き攣った顔をした。

「掃除云々の前に、大丈夫なの?潰れない?」
「じきに取り壊すって噂は出てます」

ミルクを飲み終えた赤ん坊を上手にゲップさせる。

「はい」

三枝さんは赤ん坊を私に抱っこさせた。
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