言いましたが、 違います‼︎
「これがその子が置いて行ったもの?」
三枝さんが、大きな鞄から一つ一つ荷物を取り出し、机に並べる。
並べ終わると、大きく深く溜息をついた。
「妹さんって言ったわね。慎太郎君を連れて来たのって」
「はい。産まれてすぐにいなくなったって言ってました」
「この子に会いに来たら、よく頑張ったって褒めてあげてね」
三枝さんは泣きそうな顔で優しく慎太郎を撫でた。
「自分で産んだからこそ、耐えれるの。
少しずつお腹が大きくなって、愛おしく思ってたからこそ、守らなきゃって思うの。
それでも、それでも耐えきれない時がある。
こんなに可愛いって思っても、憎らしくていなくなって欲しいって思ってしまう時が、育児にはあるのよ」
こんなにほっぺがプニプニなんだもん。
妹さんなりにちゃんと愛して育てようとしてたのよ。
でも、無理だった。それだけ。
ちゃんと幸せになって欲しいって思ったから、お父さんを探したんじゃないかな。
「その子に、悪くないよ。
僕の所に慎太郎を連れて来てくれてありがとう。いつでも慎太郎に会いに来て。
気が向いたらでいいからって言ってました」
三枝さんは慎太郎のプニプニのほっぺたを突きながら、
「あら、お父さんはちゃんと分かったのね」
と慎太郎に話しかける様に言う。