言いましたが、 違います‼︎


それから、私の顔を真剣に見た。

「だから、関わるのなら生半可な気持ちで関わっちゃダメ。0か100。二つに一つよ。

まぁ、とりあえず一通り教えるわ。
今まだ戻らないって事は、当分戻って来ないわよ。男の一人暮らしなんて」

乳幼児と住める部屋になんてなるのかしら?


ミルクのあげ方、オムツの交換の仕方、ゴミはどうすればいいのか、お風呂の入れ方など

本当に一通り教えてくれた。

本物の母親なら、ゆっくりと生まれてくる前に何度も練習する事を

メモでは追いつかない。

三枝さんはやりながら説明してくれる。
それを映像に残していく。

途中で実際にやったりしていると、あっという間に時間が過ぎていく。


三枝さんのスマホが鳴る。

「タイムリミットだわ」

三枝さんは

「2時間おきに起こされる事を覚悟しなさい。何かあったら、いつでも連絡してきていいから。頑張って」

と言いながら帰っていく。

私は「ありがとうございます」と深くお辞儀をした。
こんな私に手を差し伸べてくれる優しさに泣きそうになった。


私が悪いんじゃない。

本当なら既にお風呂に入ってベッドの住人になる予定だった。
私はただ巻き込まれただけの被害者。

でも、慎太郎の暖かさと重みが心地よかった。
全てがどうでも良くなるぐらいに。

これが母性というのなら、そうなのかもしれない。

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